乾燥・焼却の豆知識

「汚泥乾燥」について

各種の汚泥は、脱水行程を経て処理処分されていますが、多くの場合、含水率が高いため、取扱いが難しく、資源化・処分のいずれの場合でも問題になっています。それら汚泥の処理において、汚泥乾燥技術を活用することにより、あらゆる汚泥の減量及び資源化を可能にし、ランニングコストや処分費の削減が可能になります。

 

汚泥乾燥技術により、汚泥を乾燥菌体肥料や副産複合肥料・汚泥肥料などとして利用することも可能になります。汚泥を直火や超高温で乾燥する汚泥乾燥の直接乾燥方式に比べて間接乾燥方式の場合は、農業で多く必要とされる有機質を含んだままの乾燥汚泥をつくることができます。

 

有機質を含む汚泥は、食物残渣や野菜に付着した畑の土などになります。汚泥乾燥によって、これらの有機質を生み出し、乾燥汚泥を肥料や融雪剤などとして有効活用する可能性が広がるなど、エコロジーの観点からも、汚泥乾燥技術はきわめて有用な技術であると考えられます。

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「汚泥乾燥」について

汚泥乾燥技術には、造粒乾燥、油温減圧乾燥、改質乾燥などの汚泥乾燥の種類があります。

 

■造粒乾燥
造粒乾燥方式は、汚泥の粘着性を利用し、乾燥粒子(核粒子)に汚泥を薄膜状に塗布し、転動造粒した汚泥を熱風で乾燥させる汚泥乾燥の方法です。水分を蒸発させる操作のため、基本的に脱水汚泥中の有機物は分解されていません。

 

造粒乾燥システムは、二軸ミキサーで脱水汚泥と循環乾燥汚泥を混合・混錬することで造粒する「造粒プロセス」と、乾燥ドラム内で約450℃の熱風により乾燥される「乾燥プロセス」で構成されます。造粒乾燥汚泥は、分級機により分級され、所定の粒径だけを製品ペレットとして排出し、その他の造粒乾燥汚泥は循環乾燥汚泥として「造粒プロセス」に戻される汚泥乾燥です。

 

また、汚泥の乾燥ガスは熱交換器で加熱されて循環しますが、蒸発水分が一定に維持されるよう、常にガスの一部がコンデンサに引き抜かれ、水分を凝縮した後、ガスは熱風発生炉に送られ燃焼脱臭されます。本システムで得られる製品の主な特徴は以下になります。

 

●外観はねずみ色で、ハンドリング性に優れている。
●含水率は低いため、生汚泥に比べ臭気が少なく、吸湿しない条件で長時間貯留しても変質せず貯留性に優れている。
●製品に含まれる有機成分は造粒乾燥ペレット中に濃縮されるため、炭化製品に比べ保有熱量が高い傾向にある。

 

■油温減圧乾燥
油温減圧乾燥は、脱水汚泥と廃食用油を混合し、減圧化で加熱することにより下水汚泥中の水分を高効率で急速に蒸発させる汚泥乾燥の方法です。

 

汚泥乾燥の技術の1つである油温減圧乾燥システムは、脱水汚泥と廃食用油を混合する予備加熱タンクと油温減圧式乾燥機、乾燥汚泥から油分を分離する油分離機で構成されています。汚泥乾燥の過程で発生する蒸発水分は、ミストキャッチャーで捕捉され、汚泥乾燥機の加温に再利用されます。本システムで得られる汚泥乾燥機の主な特徴を以下に示します。

 

・汚泥乾燥機の外観は黒色でペレット粒状。 ・高温処理による殺菌性により、製品の安全性に優れている。 ・油分を含むため、石炭と同程度の低位発熱量を有し、炭化製品や造粒汚泥乾燥製品に比べ保有熱量が高い傾向にある。 ・ 放熱性の悪い環境や酸素リッチな環境の元では、自己発熱特性を有する。

 

■改質乾燥
改質乾燥は、下水汚泥を炭化と乾燥の中間的な条件下で脱水性の高い状態に改質した後、汚泥乾燥させる技術です。

 

改質汚泥乾燥システムは主に改質・冷却装置、脱水・乾燥装置及び排水処理装置で構成されています。投入された脱水汚泥は、改質器で高温スチームによる水熱反応を受け液状化し、同時に有機成分の一部が分解し、酸素が離脱して改質されます。その後、汚泥脱水機で脱水され、汚泥乾燥機で粒状の燃料製品となります。

 

また、脱水機において発生するろ液を嫌気性処理槽で処理してメタンガスを回収し、改質用ボイラの補助燃料として利用する。嫌気性処理後の処理液は、振動NF 膜により処理されます。

 

なお、冷却器から得られる熱エネルギーは、循環する熱媒油により回収され、乾燥工程の熱源として利用されます。本システムで得られる製品の主な特徴を以下に示します。

 

●発熱量は脱水汚泥と比較して同等以上の値となります。
●製品の安全性については、ほかの炭化燃料製品や汚泥乾燥燃料製品と同程度で、粉塵爆発性も良好です。

 

下水汚泥は,集約性があり,量・質的に安定している特徴を持つバイオマス資源です。全国で発生するうちの約7割が再利用されており,主にコンポストや建設資材の原料として利用されています。

 

しかし,それらは処理処分コストや安定需要の課題が想定されるため,長期的に安定した利用用途の開拓が求められています。そこで,新たな下水汚泥の用途として,石炭の代替燃料となる下水汚泥固形燃料化技術が検討され,既に一部で実用化されています。

 

下水汚泥固形燃料化技術は,汚泥乾燥技術または炭化技術により下水汚泥から燃料製品を製造するものです。製造した燃料製品を石炭火力発電所等で化石燃料に替わる燃料として利用することにより,温室効果ガスの削減につながる技術として期待されています。

 

本改質汚泥乾燥燃料化技術は,水熱反応により汚泥を改質し,エネルギー的に効率良く高品位の燃料製品を製造するものです。本研究は,「改質汚泥乾燥による下水汚泥のバイオマス燃料化技術」の開発を目的として実証実験を行い,生成エネルギーが投入するエネルギーを上回ることを明らかにするとともに,製造した燃料製品の品質や安全性の評価を行ったものです。

 

高温高圧水による脱水汚泥の熱化学的改質は,下記に示す2つの働きがあります。

 

●汚泥の脱水性を改善し,低含水率での脱水が可能となり燃料製品化に要する汚泥の乾燥エネルギーを大幅に削減できる。
●汚泥が組成変性され,酸素分子の減少割合が大きくなり,燃料特性を改善する。

 

改質汚泥乾燥の処理温度は,汚泥乾燥技術と炭化技術の中間に位置します。炭化は,低酸素状態,もしくは無酸素状態で加熱することで水分および吸着ガスを放出して熱分解が始まり,分解ガスを放出した後に炭素を主体とした炭化物を生成する過程です。

 

その過程で有機成分の分解が進み,固定炭素に富んだ状態となります。また,乾燥は,水分を蒸発させる操作のため,基本的に脱水汚泥中の有機成分は分解されていません。改質汚泥乾燥の場合,水分の蒸発だけでなく,脱水汚泥の有機成分の一部が分解されます。また,通常の熱分解では揮発成分が蒸発しますが,水熱反応では圧力下にあるために脱離液中に溶解したままです。

 

(参考)「下水汚泥エネルギー化技術ガイドライン」・「改質乾燥による下水汚泥のバイオマス燃料化技術に関する技術マニュアルの概要」

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